第76回金沢市工芸展 [楓鳥眼杢拭漆八角小箱]

もの作り
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令和2年2月26日(水)から3月2日(月)まで、めいてつ・エムザで 第76回金沢市工芸展 が開催されます。今回の作品は、8回目の出品で、物を入れる八角小箱です。作品名は、楓鳥眼杢拭漆八角小箱(かえでちょうがんもくふきうるしはっかくこばこ)です。作品名の鳥眼杢は木の模様を意味します。無事に入選したので紹介したいと思います。

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第76回金沢市工芸展

今回の第76回金沢市工芸展で8回目の出品となりました。
第69回と第70回では刳物(くりもの)を出品し、第69回ではタモ拭漆手刳六角盆(たもふきうるしてぐりろっかくぼん、タモは木偏に弗)、第70回では楓拭漆器(かえでふきうるしき)を出品しました。
そして、第71回からは指物(さしもの)の盆で、栓拭漆象嵌四方盆(せんふきうるしぞうがんしほうぼん)を出品しました。
これまでの三作品は盆が中心でした。

第72回では、指物の箱で、タモ拭漆箱(タモは木偏に弗)を出品しました。
第73回も、2回目の指物の箱で、栃拭漆箱(とちふきうるしばこ)を出品しました。
第74回は、3回目の指物の箱ですが、今までの作品で最も小さい、タモ拭漆小箱(たもふきうるしこばこ、タモは木偏に弗)を出品しました。
第75回は、今まで作製した指物の盆を小皿にした栃縮杢拭漆銘々皿(とちちぢみもくふきうるしめいめいざら)を出品しました。

金沢市希少伝統産業木工専門塾は、最長で3期(9年間)まで在籍できますが、基本的には、それ以上の期間延長が出来ません。
3期修了後は、施設にある大型の電動工具を利用できなくなります。
今年が木工専門塾に在籍できる最後の年です。

今年の金沢市工芸展は、2月26日(水)から3月2日(月)までの開催で、10時から開場し、18時30分で閉場します。
最終日の2日(月)は17時で閉場なので注意してください。

新型コロナウィルスのため、作品の展示以外全てのイベントが中止されました。

私が知る限り、去年から工芸体験コーナーが開催されるようになったと思います。
残念ながら中止になりましたが、来年も何かしらのイベントが開催される可能性があるので、各イベントの情報をそのまま掲載しておきます。

今年は、2月26日(水)の10:30~11:00までシンポジウム「国立工芸館が金沢にやってくる」が開催されます。
2月27日(木)の14:00~15:00までスペシャルトーク「私の好きな金沢の工芸」が開催されます。
各日10時~16時までお茶席が開催されています。
また、工芸体験コーナーも2月29(金)~3月1日(土)に開催されています。

2月29日

小さな加賀ゆびぬき作り
(講師 森本道恵氏)

錫で作るアクセサリー・箸置き
(講師 秋友美穂氏)

3月1日

水面にえがこう!墨流し染め
(講師 須藤真美子氏)

オリジナル豆皿作り
(講師 飯田倫久氏)

ギャラリートークが2月29日(土)に16時から17時まで行われるので、入賞した作品の詳細を聞くことができます。

 

 

楓(カエデ)について

今回の作品に使用した木材の一つは楓です。
箱の蓋と高台部分を作製するために使用しました。

楓も栃と同じように縮杢が入る場合があり、その杢目がホログラフィーのように見る角度によって変化します。
楓は、一般に辺心材の区別がなく、淡黄白色ないし紅白色をしていて、緻密で絹糸のような光沢があって綺麗です。
金沢市希少伝統産業木工専門塾では、楓も栃同様に作品を作る人が多く、馴染みのある木ではないかと思います。

第70回では、楓拭漆器(かえでふきうるしき)を出品しましたが、栃ほどの縮杢はありませんでした。
楓については、Weblioから以下の内容を引用しました。

カエデ科カエデ属植物の総称世界に約200種、日本十数種あり、日本産ではイロハモミジ類がその紅葉の美しさ代表的である。材は緻密細工物器具材とする。サトウカエデ・イタヤカエデの樹液からは糖分を採る。そのほかハウチワカエデ・メグスリノキなどがある。

Weblio辞書「カエデ」より

楓の杢目には、虎縞のような虎杢(とらもく)、縮杢(ちぢみもく)、後で紹介する鳥眼杢(ちょうがんもく)などがあるようです。
楓も栃同様に軽軟な木材なので、ちょっとぶつけたりしただけでも傷がつく場合があります。

カエデ材は、床板、運動具(スキー板、ラケット枠など)、家具、細工物などによく用いられるそうです。
バイオリンの側板および裏板、ピアノのアクション部材、ボウリング場の床板およびピンなどにも使われる場合があるそうです。

 

 

楠(クスノキ)について

今回の作品に使用した木材のもう一つは楠です。
箱の身の部分を作製するために使用しました。

楠については、Weblioから以下の内容を引用しました。

クスノキ科常緑高木暖地自生し、また公園などに植栽される。長寿で、高さ20メートル以上、直径2メートル達する。卵形先端がとがり、革質晩春黄緑小花をつけ、晩秋球形黒色果実を結ぶ。全体芳香があり、樟脳しようのう)を採る。材は器具材とする。

Weblio辞書「クスノキ」より

Weblioの説明にもありますが、楠には独特の匂いがあります。
この匂いは樟脳の匂いで、樟脳は主にかゆみどめ、リップクリーム、湿布薬など外用医薬品の成分として使用されています。
それ以外に、樟脳には防虫剤・防腐剤の効果があります。

楠の杢目には、樹木の瘤のような所に現れる同心円形の模様の玉杢、鳥眼杢のように小さな円形の模様が連なって葡萄の房のような葡萄杢、縄目杢などがあります。

図 今回の作品作品に使用した楠の杢目

 

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鳥眼杢について

今回の作品には鳥眼杢がある板材を使用しました。
鳥眼杢については、Weblioから以下の内容を引用しました。

小鳥の目のような小さな円形斑点が、板面上にたくさん散らばって現れる杢目を「鳥眼杢」あるいは「鳥目」という。カエデ類に多く現れる杢目で、中でも「バーズアイメープル」(北米生育するカエデ科樹木で、シュガーメープルとも呼ばれている)が有名である。
Weblio辞書「鳥眼杢」より

今回利用した鳥眼杢は残念ながら眼の散らばりが疎ら(まばら)です。

図 今回の作品作品に使用した鳥眼杢

何故なら、鳥眼杢が板面全体に散らばっているような銘木は非常に希少で値段が高く、手に入り辛いからです。
また、鳥眼杢は表面を非常に加工しづらいです。
鳥眼杢の杢目は丸いため、鉋で表面を整える場合、半円を基準に順目と逆目が入れ替わります。
この結果、逆目になった半円から鳥眼杢が毟れて窪んでしまう場合があります。

 

楓鳥眼杢拭漆八角小箱(かえでちょうがんもくふきうるしはっかくこばこ)

今回の作品に鳥眼杢を選んだ理由の一つは、縁起物ということがあります。
鳥眼杢は、読んで字のごとく、鳥の眼の模様です。
眼の模様が出るということで、「眼が出る」が転じて「芽が出る」と言い換えることが出来ます。
「芽が出る」には、成功の兆しが見える、幸運が巡ってくるなどの意味があります。

また、今回の作品は今まで作ってきた四角ではなく、八角の箱にしました。
八角の八は、「末広がり」を意味し、四方八方の八方には「あらゆる方面」と言う意味があります。
八角にも何かと縁起が良い意味があります。

鳥眼杢の「芽(眼)が出る」、八角の「あらゆる方面」を組み合わせて、「あらゆる方面に芽が出る」ようにという縁起を担いで今回の作品の杢目と形を選びました。
鳥眼杢はもう少し杢目があると分かりやすかったかもしれません。
しかし、希少価値が高くて手に入りにくく、綺麗に加工できる自信がありません。

図 上面(楓)

図 側面(楓)

箱の身の部分には楠を使用しました。
楠には樟脳の匂いがあるのですが、拭漆をした結果、ほとんど匂わなくなりました。
当初の目的は、樟脳の匂いによる防虫効果でした。
ところが、樟脳の匂いがなくなってしまったので、その効果は不明です。
ただ、樟脳の匂いはかなり強いので、場合によっては、箱の中に入れた物に匂いが移る可能性があったかもしれません。

図 上面(楠)

図 側面(楠)

今回の作品でも、Xperiaの3D Creatorで撮影した3Dモデルを以下に掲載します。
箱の裏になる高台(こうだい)部分は撮影できないので見ることはできません。
しかし、それ以外は回転させたり、拡大したりすることで見ることが可能です。

[Canvasio3D Scene=9]

図 3Dモデル

表面に光沢があると上手く3Dモデル化できないので、側面の鳥眼杢が見にくくなっています。
今回、箱の中身に使用した楠はそれほど光沢がなかったので、3Dモデル化できると思いました。
しかし、残念ながら、今回も箱の中身は上手く撮影できなかったので、お見せすることが出来ません。

 

 

最後に

前回の第75回に出品した栃縮杢拭漆銘々皿(とちちぢみもくふきうるしめいめいざら)に引き続き、今回も以下の電動工具で冶具を作製しました。

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今回の作品は、八角の箱なので、今までの作品に比べて、形が複雑になりました。
小さい作品は杢目が分かりにくいという欠点があります。
鳥眼杢は鳥の目のような杢目が数多くあるので分かりやすいと思いました。
しかし、実際には、杢目が集まっているところと、そうでないところが疎らになっており、鳥眼杢が思ったほど目立ちませんでした。

八角形の場合、今までの四角形の箱に比べて、板の幅が狭くなります。
仮に、四角形の一辺6cmを基準に同じサイズの八角形の箱を作る場合、板の幅は3cmになります。
また、対角線8.49cmを基準に同じサイズの八角形の箱を作る場合、板の幅は4.24cmになります。
このように、小さい箱の場合は角が増えるほど、板の幅が狭くなり、杢目が分かりにくくなる可能性があります。
今までの小さい作品で使用した杢目は、玉杢・縮杢・鳥眼杢でした。
小さい作品は、大きい作品に比べて杢目が目立ちにくいので、今後もどのような杢目や形が良いかを検討していく必要があります。

今回の作品は、願掛けで鳥眼杢がある八角形の箱でした。
これは、私が木工塾の塾生として最長在籍可能期間の3期を終えるので、「あらゆる面で芽が出るように」今後の活動を祈って作製しました。
また、最近の利用者さんにも新たな変化や活動が見られてきています。
例えば、20年以上引き籠っていた利用者さんは、いつの間にかバスなどの公共の交通機関を利用できるようになり、就労支援の体験に通い始めました。
また、統合失調症から双極性障害に診断名が変わった別の利用者さんは、病状が悪化してからあまり自炊をしていませんでした。
しかし、最近、ヘルパーさんが入り、自炊をするための準備を進めています。
さらに、過食症だった利用者さんは来年度から予備校に通うことが決まりました。
他の利用者さんも少しずつ環境が変わり始め、新たな挑戦が始まっています。
挑戦することで何かしらの芽が出ることを期待しています。

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