去年のクリスマス会では、自作したステンシルシートを使ってキャラクタークッキーを作りました。しかし、意外と時間が掛かり、あまりゆっくり食べることが出来ませんでした。そこで、今年は前回の教訓を活かし、材料も少なく、手間も掛からない方法で 2016年のクリスマス会のお菓子作り に挑戦しました。
はじめに
T&N リサーシャでは、毎年、クリスマス会を行っています。
今年で4回目ですが、今年のクリスマス会は利用者さんの都合が中々合わなかったので、参加できる人たちでお菓子作りをすることにしました。
人数がどれだけ集まるか分からず、急遽行うことになったので、出来るだけ手軽で時間が掛からない方法ですることにしました。
人数が集まるかどうか分からないにもかかわらず、今回のお菓子作りを強行?したことに疑問を持つ人がいるかと思います。
富山大学医学部付属病院の精神科作業療法室でもクリスマス会などの複数人で集まる行事を行っています。
患者さんの中には、複数人が集まるクリスマス会への参加を呼び掛けても興味が無さそうだったり、参加を嫌がったりする人がいます。
それでも、いざクリスマス会を開いてみるとちゃんと参加する時があります。
口では興味や関心がない、あるいは嫌だと言っても心の中で思っていることは違う場合があります。
また、患者さんが参加に後ろ向きだからと言ってクリスマス会などの複数人で行う行事を行わなければ、その患者さん達はいつまで経っても複数人でいることに慣れる機会を失い続けるかもしれません。
仕事で社会復帰する場合、複数の人との関わりを避けることは出来ません。
つまり、クリスマス会の行事にすら参加できないということは、仕事で社会復帰することすら難しい可能性があります。
これらのことから、たとえ参加人数が保証されていなくても、行事を強行?する必要がある場合があります。
当施設を利用されている方の多くも、富山大学で見ている患者さんと同様に人との関りを避けます。
しかし、利用者さん同士で関わる機会が増えてくると、複数人が集まる行事にも徐々に参加するようになってきます。
少人数でも徐々に参加して場の雰囲気に慣れ、経験を積むと、この人たちが今後の行事の中心になる場合があります。
なぜなら、自分が経験したことを新たに参加してきた人に当て嵌め、その人の行動を理解できる可能性があるからです。
このため、慣れた人が新たに参加してきた人を受け入れる環境を少しづつ作る必要があります。
2016年のクリスマス会のお菓子作り について
今回のお菓子作りは、以下の三つの選択肢から選ぶことにしました。
参考サイトは、クックパッドです。
材料2つ♡濃厚ガトーショコラ
photo from cookpad |
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材料2つ♡ホワイトチョコスティックケーキ
photo from cookpad |
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♡材料2つ♡超濃厚♡チョコクッキー
photo from cookpad |
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まず、ホワイトチョコスティックケーキは、ホワイトチョコレートが利用者さんの中で人気がなく、すぐに除外されてしまいました。
チョコクッキーは、去年のクリスマス会で別の方法でクッキーを作ったということもありました。
最終的には、「どちらにしようかな」で、ガトーショコラが今回のお菓子作りに選ばれました。
ただ、いずれのお菓子も材料が二つと少ないので、どんなお菓子が出来るか参加者全員がお菓子の出来に懐疑的でした。
ガトーショコラの作製
ガトーショコラでは、お菓子作りの経験がある利用者さんは、生地のつなぎになる小麦粉がないことを不安視していました。
また、卵白を泡立てる場合、今までは砂糖を混ぜて泡立てていました。
そして、砂糖を入れない場合、角ができるまで卵白を泡立てることが出来なかったので、砂糖がないことも不安視していました。
今回のお菓子作りに参加した利用者さんは二人だけでした。
しかし、以前は面倒臭がってお菓子作りに参加しなかった方が、参加するようになりました。
また、体調が悪く、最初は見ているだけと言っていた方が、ちゃんと最後までお菓子作りを手伝っていました。
今回作ったガトーショコラの材料の分量は、人数が少ないこともあり、卵2個、ブラックチョコレート2枚(120g)でした。
ブラックチョコレートにしたのは、二人とも甘いのが苦手だからでした。
結果的に完成したのは写真のようなガトーショコラでした。
周りに若干こぼれてしまったのはご愛嬌ということで…。
見た目は若干良くないかもしれませんが、思っていた以上に生地も膨らみ、味も悪くありませんでした。
このことに関しては、参加者全員の意見が一致しました。
最後に
これまでに病院や施設で見てきた患者さんの多くは、グループ活動が苦手でした。
患者さんは、仕事や作業療法などでやり方を聞くというような会話は出来るのですが、休み時間やお茶の時間が苦手で人の輪の中に入れず、雑談が出来ませんでした。
人の輪の中に入って雑談ができないためか、そこでの会話の内容が分からず、会話をしている人たちが自分の悪口を言っているのではないかと怯える特徴が一般の人に比べて顕著でした。
このため、患者さんが複数の人との雑談を克服できるよう、現在も勤めている富山大学やその他の多くの病院・施設で、お茶会やクリスマス会などのグループ活動を大事にしてきました。
さらに、このグループ活動で大事な目的は、参加者全員がグループ内での役割を自分で考えて行動することです。
そのため、医療従事者による指示や指導を減らし、患者さん達が出来ないところを補うだけにしています。
グループ活動を自分たちで企画・運営することで、グループ活動で何をするか、各自がどのような役割を行うかを話し合い、その中で雑談もするようになっていきます。
こうすることにより、1回目より2回目と慣れてくるに従って、活動の内容が変わり、活動量も上がり、積極的に動くようなになります。
初めは動かなくても、患者さん本人は周りをよく見ており、次第に動くようになります。
当施設でも同様に、出来るだけ利用者さんの自主性に任せてクリスマス会や新年会などのグループ活動を行っています。
残念ながら、今年のクリスマス会は、以前のクリスマス会に比べて参加者は減ってしまいました。
しかし、参加してくれた利用者さんからはそれぞれの変化を窺い知ることが出来ました。
1人の利用者さんは風邪を引いて体調不良だったので、手は出さないけど口を出すと言いながらも、指示を出しつつ要所要所できちんと手伝っていました。
もう1人の利用者さんは面倒臭がっていましたが、指示されたことに不機嫌になりながらも、ちゃんと手伝っていました。
この利用者さんが傍から見ると不機嫌そうだったので、今回のクリスマス会は失敗かなと思っていました。
ところが、後で話を聞いてみると、本人なりに楽しんでいたようで、ご家族にもクリスマス会の内容を報告していました。
やはり、こちらの印象と利用者さんの印象では違うようです。
今回参加できなかった利用者さんの中には、このようなグループ活動に参加することを目標にしている人もいるので、今後も機会があれば何かしらの形でグループ活動を続けていけたらと思います。
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