photo by しおしお(ぱくたそ)
2015年から始めたお菓子作りもクリスマス会の恒例となりました。 2017年のクリスマス会のお菓子作り では、炊飯器を利用したケーキ作りをすることにしました。今年の参加者は、今までと打って変わって平均年齢がグッと上がりました。初参加の方が数名いましたが、今まで参加を促しても中々参加に踏み切れなかった利用者さんが今回、ついに参加することが出来ました。この利用者さんは、最初の頃は複数の人が同じ空間にいることが苦手で一人でいることを好んでいました。しかし、今年に入ってから当施設の利用回数を増やし、他の人がいる時間帯でも来るようになり、大きな変化を遂げました。ただ、この変化は、自分で目的を見つけ、一つ一つを達成してきた成果だと思います。
はじめに
T&N リサーシャでは、開設以来、少人数ではありますが、毎年、クリスマス会を行っています。
このクリスマス会では、可能な限り参加する利用者さんに企画をしてもらったり、役割を分担してもらったりと、社会復帰する上で必要であろう経験をしてもらいます。
実際の社会でも複数の人と関わることは避けることは出来ず、人との関わる上での立ち居振る舞いを成長課程の中で幼少期から自然と身に付けます。
しかし、この教育課程で何らかの原因で引きこもって他者との関わりを経験できなかった場合、複数の人と何かを企画したり、役割を分担することができません。
あるいは、精神病の患者さんの場合、入院や自宅療養などで他者との関わりが希薄になっていると会話が億劫になっている場合があります。
そうすると、社会復帰しても他者とのコミュニケーションが上手く取れず、職場環境に馴染めなかったりして、すぐに仕事を辞めてしまいます。
このような問題を防ぐために、当施設では「もの作り」の課題を通して利用者さん間で共通点を作り、まず「もの作り」に関する会話が生まれるようにしています。
ただ、当施設が提供する「もの作り」では、多人数で何かを企画したり、共同して作業をする機会がありません。
そこで、クリスマス会や忘年会、新年会を企画し、その中で調理を通して役割分担をして共同で作業を行ってもらいます。
2015年・2016年は10~20代の利用者さんが企画し、少ない材料で作るお菓子作りを行っていました。
今年は、30~60代の利用者さんで炊飯器を利用したお菓子作りを企画することにしました。
この理由は、これまでは電子レンジを利用してお菓子を焼いていたのですが、レシピの時間通りに焼いても上手く焼けなかったからです。
そして、焼き上がるまでに焼け具合を確認する基準が見た目だったので、食べるまでにかなり時間が掛かりました。
このため、電子レンジ以外に当施設にある調理器具を使ってお菓子が作れないかを調べたところ、炊飯器を利用したお菓子作りを見つけました。
実際に行ってみると、思っていたよりも簡単?ではなく、幾つか問題があったので、今後のために備忘録としてこの記事を記載しておきます。
2017年のクリスマス会のお菓子作り
これまでに行ってきた2015~2016年までのクリスマス会のお菓子作りは10~20代の利用者さんが中心に行ってきました。
この時は、キャラクターを描いたクッキーや、なるべく手間が掛からず、かつ材料が少ないお菓子作りを行いました。
しかし、10代の利用者さんが学校へちゃんと行くようになって社会復帰したので、2017年のクリスマス会のお菓子作りは30~60代の利用者さんが中心となり、グッと平均年齢が上がりました。
皆さん、あまり甘すぎるのは苦手だと思ったので、甘さ控えめそうなレシピを探すことにしました。
そして、今回作ったお菓子作りは、以下のサイトを参考にしました。
サイトの紹介では、チョコ控えめと書かれており、今回の参加者の年齢に合わせて?チョコはブラックチョコレートにしました。
仕上げ用の粉砂糖は、甘さを控えるために省きました。
主材料 | |
チョコレート | 明治の板チョコ(ブラック) 1枚 |
薄力粉 | 160g |
ベーキングパウダー | 小さじ1.5杯 |
砂糖 | 90g |
塩 | 1つまみ |
卵 | 2個 |
牛乳 | 大さじ4杯 |
バター | 25g |
レシピでは、炊飯器の内釜に塗るサラダ油があったのですが、片付けの手間を省くためにクッキングシートを敷くことにしました。
クッキングシートの加工方法は、以下のサイトを参考にしました。
クッキングシートを円形に切る場合、円は二等辺三角形の集合体なので、以下の図ようにクッキングシートを折り曲げていきます。
例えば、幅30cmのクッキングシートの場合、30cm四方の正方形にクッキングシートをカットします。
次に、15cm四方の正方形になるようにクッキングシートを折り曲げた後、対角線で折り曲げて三角形を作ります。
後は、円の中心になる角を基準に半分に折っていけば良いだけです。
細かく折れば、その分、円形になります。
必要な分だけ折ったら、最後に図の青線で示すように適当な位置で切ります。
今回利用した炊飯器の釜の直径が16.5cmなので、釜に入れるクッキングシートの半径が13~14cmになるように切ると、深さが5~6cmになります。
参考サイトでは深さにあたる部分に切れ込みを入れていますが、生地が切れ込み部分から流れ出るのを防ぐために切れ込みを入れませんでした。
チョコケーキの作製
今回のチョコケーキの作製手順は以下の通りです。
- 板チョコレートを小さく割って、バターと一緒に耐熱容器に入れる。
- 電子レンジで加熱してチョコとバターを溶かして柔らかくしてから混ぜる。
- ボウルに小麦粉とベーキングパウダーを入れ、泡だて器で混ぜる。
- 小麦粉とベーキングパウダーを混ぜた後に砂糖と塩を加えてさらに混ぜる。
- 卵と牛乳を入れ、液体部分を軽く混ぜる。
- 液体部分が適度に混ざったら、4の粉を取り込むように混ぜる。
- 6に2のチョコレートを加えて混ぜる。
- クッキングシートを敷いた釜に生地を流し入れ、炊飯器の炊飯ボタンを押す。
- 1回の炊飯で焼き上がらない場合は、焼き上がるまで炊飯を繰り返す。
2では、チョコレートより先にバターが溶けます。
バターが溶けていれば、それなりの温度になっているので、チョコレートも混ぜれるぐらいに溶けています。
3~6では、混ぜるときに勢いがあると粉や液体が飛び散るので注意が必要です。
参考サイトでは所要時間が45分で、炊飯器で普通に炊くだけと書かれています。
しかし、実際には使用する炊飯器によっては45分以上掛かり、場合によっては焼き上げることが出来ず、生焼けで失敗することもあります。
これは、炊飯器によってケーキを焼くのに向き不向きがあるからです。
この件に関して調べてみると、以下のサイトを見つけました。
どうもIH圧力式やヒートセンサー付きの炊飯器は生地の中まで火が通りにくいようです。
ケーキが焼けるかどうかは、予め炊飯器の仕様や機能を調べておく必要があります。
幸いにも、今回使用した炊飯器は型が古く、IH圧力式やヒートセンサー付きの炊飯器ではありませんでした。
また、炊飯器には通常の炊飯と早炊きがあります。
クリスマス会の前に試しに焼いてみたところ、通常の炊飯では焼き上がるのに1時間以上掛かりました。
そこで、本番では早炊きで焼いてみたところ、1時間以内で焼き上がりました。
焼き上がりに時間が掛かるのはひょっとしたら釜の下にクッキングシートを敷いていたからかもしれません。
焼き上がるまで炊飯を繰り返し、炊飯の途中で竹串を指して焼き上がりを確認しました。
生地表面までちゃんと焼き上がらない場合があるので、その時はひっくり返すか、最後はオーブンで生地表面を焼きます。
今回使用した炊飯器では、一応、生地表面まで焼き上がったので、ひっくり返して再炊飯したり、オーブンで焼きなおす必要はありませんでした。
クッキングシートの折り目で側面が凸凹しているのは、この際、目をつぶってもらいましょう。
炊飯器で生地を焼いた場合とオーブンで焼いた場合とではかなり異なりました。
具体的には、オーブンで焼いた場合、上から加熱されるので、底の方があまり膨らまずに生地が固くなる場合があります。
しかし、炊飯器の場合は、下から加熱されますが、釜の内部が密閉状態で加熱されるためか生地が全体的に膨らんでいます。
以下に、Xperia XZ1の3D Createrで3Dモデル化したチョコケーキを載せてみました。
光沢のあるものだと上手く3Dモデル化出来ないので、皿の部分が変になっていますが、生地の断面や外側は実物に近いように思えます。
生地の断面を見ると、全体的に気泡の跡があり、満遍なく膨らんでいると思われます。
実際に炊き立て?を食べたときの食感も柔らかく、美味しかったです。
ただ、冷えると生地が固まるので、蒸しケーキのような感じです。
冷えても電子レンジで数十秒ほど加熱すると、生地が再び柔らかくなります。
最後に
今年のクリスマス会は、過去二年間の10~20代の時とは異なり、30~60代の利用者さんが参加しました。
人数も過去二年間は2~3人でしたが、今年は4人でした。
その前は、忘年会兼クリスマス会を開き、参加人数ももう少し多かったです。
しかし、この時は15時から始めても、材料などの買い出しをしていたので、終了するのが21時近くと遅かったです。
このため、2時間以内に終わるようにするためにお菓子作りに変更されました。
そして、出来るだけ、材料が少なく、簡単に出来るお菓子のレシピを選びました。
実際にやってみると、2時間では終わりませんでした。
そこで、今回の三年目にして、事前に炊飯器でのチョコケーキを試作しました。
試作では通常の炊飯で焼いたため、時間が掛かり、生地を作って焼き上がるまでに2時間以上の時間が掛かりました。
なので、クリスマス会当日では、事前に下調べをして、早炊きでもケーキを焼けることが分かったので、早炊きで焼くことにしました。
ただ、早炊きで焼くと1時間以内で焼けるのですが、試作のケーキに比べると水分が蒸発して若干パサパサになってしまいました。
炊飯器の早炊きでケーキを焼く場合、水分があまり蒸発しないように竹串で小まめに内部の焼き具合を確認した方が良いかもしれません。
今回のクリスマス会の大きな出来事は、今まで声を掛けていた30代の利用者さんが参加したことです。
この利用者さんは、人が複数いる空間が苦手で、当施設の利用も他の利用者さんがいない時間帯を選んでいました。
しかし、僅か1年の間に週1回の利用が週2回になり、そのうち1回は他の利用者さんがいる時間帯を選ぶようになりました。
とは言え、最初から2時間一緒に他人と居れる訳ではないので、協力してもらえる他の利用者さんに来る時間をずらしてもらったりしました。
週2回に来れるようになるまでには、様々な出来事があり、数年の時間が掛かりました。
ご本人曰く、最初の頃は現実感がなく、当施設に来る必要が何故あるのかということで、数か月に1回来るか来ないかでした。
数か月間から数週間へと徐々に来る間隔が短くなっていきました。
そして、いつの間にか自分で目標設定をするようになり、着実に目的を達成するようになっていきました。
1人の人が変わるには、本人の意思も重要ですが、周りの人の協力も必要です。
将来的には、周りに人達に協力できるようになれば良いと思います。
もう1人の30代の女性は、仕事もしており、一見、問題がないように見えます。
しかし、普段の当施設での様子は、周りの人とあまり会話せずに作品作りを黙々としています。
今回のクリスマス会では、周りの人たちと会話していたので、今後は作品作りの最中でも他の利用者さんとももう少し会話が増えればと思います。
その他の利用者さんで、60代男性は就労支援施設に行きたがりませんでした。
しかし、病気の悪化が原因で経済状況も悪化し、就労支援施設に通わざるを得なくなりました。
ただ、そのおかげで就労が習慣化され、ここ最近は病状も安定しています。
一時はどうなることかと思いましたが、結果的には良い方向に進んでいます。
用事があったのでケーキの作製には参加できませんでしたが、企画を提案したときはケーキの作製過程を見て、自分が何が出来そうかなどを話していました。
50代の女性は、社会復帰を目指して当施設を訪れ、病状は良くなっていますが、ちょっとした環境の変化で精神状態がまだまだ左右されます。
今回のクリスマス会前に行われた面接までは、うつ状態が続いていたそうです。
しかし、クリスマス会当日は、考えがある程度整理されたようで、元気に参加されていました。
ケーキが焼き上がるまでの待ち時間ではジェンガをしていましたが、皆さん、楽しそうで何よりでした。
また、ケーキもおいしく食べれたので、良かったです。
今回のクリスマス会に参加してくれた利用者さんは、皆さん、もの作りのデータ計測をしています。
皆さん、最初の頃はデータの変化が中々安定しませんでしたが、最近は初期にに比べて随分と安定してきました。
将来的には社会復帰を果たすと、仕事の都合などでこのような会にも参加することが出来なくなります。
そうすると、その時の参加者によっては内容がまた変わるので、来年はどうなるかですね。
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