9月23~10月1日まで 2017年度金沢市希少伝統産業木工専門塾作品展 が金沢市立中村記念美術館の旧中村邸で開催されています。今回は、第6期生の卒業展として開催されます。展示場では、完成した作品だけでなく、製作途中の作品も展示しており、製作工程などを見ることも出来ます。皆様のお越しをお待ちしております。
はじめに
金沢市希少伝統産業木工専門塾は、金沢漆器の木地を製作する指物をはじめとし、木工の技術継承と後継者育成を目的として金沢市によって開設されています。
木工専門塾は、1期が3年で、毎週土曜日の午後1時から金沢市民芸術村の金沢職人大学校で開かれています。
木工専門塾が開設されてから、現在の塾生が第6期生の3年目となり、今年で18年目となります。
現在の塾生は、12名おり、中には2期・3期と続けている方もいます。
年に約54回開かれる木工専門塾で一つの作品を完成させるには半年(約27回)から1年(約54回)掛かる場合があり、順調に進んでも1期で作れる作品は3つ程度になります。
最初の1年目では、鑿(のみ)で彫る刳物(くりもの)の盆を作製します。
2年目では、鋸(のこぎり)や鉋(かんな)で加工した板を組み合わせる指物の盆を作製します。
3年目では、刳物や指物の盆で習得した技術を応用して指物の箱を作製します。
基礎的な技術を習得し、さらに自分が作りたいものを作れるようになるには2期・3期と続けることになります。
現在の木工塾の受講可能期間は、1期が3年間、2期が6年間となり、最長は3期の9年間までです。
週1回の木工専門塾で作品展が開催できるのも、約18年という長年の開設期間の賜物です。
2017年度金沢市希少伝統産業木工専門塾作品展
2017年度金沢市希少伝統産業木工専門塾作品展 は、10月23~30日まで金沢市立中村記念美術館の旧中村邸で開催されています。
開催時間は、初日の9月23日が13:00から16:00、通常の24日から29日が9:00から16:00、末日の10月1日が9:00から15:00までとなっています。
初日の開始時間と末日の終了時間が通常と異なるので、注意が必要です。
案内状では、10月1日が土曜日と記載されていますが、実際には日曜日です。
今回の展示会は、6期生が3年間の受講期間を修了したので、卒業展として開催されています。
卒業展ではありますが、作品の製作工程を知っていただくためにも、製作途中の作品も展示されています。
作品以外にも製作に使用される様々な種類の木や道具、また製作過程を表すサンプルも展示してあります。
土曜と日曜には刳物や指物の実演も行っているので、興味がある方は土日に訪れると良いかもしれません。
昨年開催された2016年度金沢市希少伝統産業木工専門塾作品展は、金沢マラソンが開催される時期と重なり、旧中村邸に通じる道路がマラソンコースとなっていました。
今年は、10月1日の最終日が百万石ロードレースと重なっているので、午前中に来訪を予定されている方は、そのことを考慮する必要があります。
展示作品について
今回、当施設のスタッフが展示する作品は、過去に金沢市工芸展に出品して入選した作品に加え、製作途中の作品もあります。
第69回金沢市工芸展 |
第69回金沢市工芸展の作品名は、タモ拭漆手刳六角盆(たもふきうるしてぐりろっかくぼん、タモは木偏に弗)です。
大きさは、幅47cm×奥行32cm×高さ4.5cmです。
第70回金沢市工芸展の作品名は、楓拭漆器(かえでふきうるしき)です。
大きさは、幅33cm×奥行33cm×高さ4.5cmです。
第71回金沢市工芸展の作品名は、栓拭漆四方盆(せんふきうるししほうぼん)です。
大きさは、幅24.5cm×奥行24.5cm×高さ4cmです。
第72回金沢市工芸展の作品名は、タモ拭漆箱(たもふきうるしはこ、タモは木偏に弗)です。
大きさは、幅24cm×奥行15cm×高さ16cmです。
第73回金沢市工芸展の作品名は、作品名は栃拭漆箱(とちふきうるしはこ)です。
大きさは、幅17cm×奥行10.5cm×高さ12cmです。
今回の作品展では、以前からホビー用の電動工具を使用して試作してきた小さな木工作品も展示しています。
それぞれの作品名は、タモ拭漆小箱(たもふきうるしこばこ、タモは木偏に弗)と栃拭漆小皿(とちふきうるしこざら)です。
タモ拭漆小箱(たもふきうるしこばこ、タモは木偏に弗)の大きさは、幅8cm×奥行8cm×高さ5cmです。
栃拭漆小皿(とちふきうるしこざら)の大きさは、幅9.5cm×奥行9.5cm×高さ1.5cmです。
最後に
現在、木工専門塾は木工の技術継承と後継者育成を目的としていますが、実際に木工職人として仕事が出来ている塾生は極少数です。
塾生の多くは、別の仕事をしつつ、限られた時間の中で木工の技術を磨いています。
木工専門塾で木工の基本として学ぶ刳物を専門とする職人は石川県内では既にいないそうです。
それでも、現在では、塾生が作製した数多くの刳物が展示されています。
今回の展示会は、第6期生の卒業展でもあり、中には4期・5期・6期と再受講して最長の3期まで受講され、今期で卒業を余儀なくされる方もいます。
中には、工場(こうば)を持って必要な設備を揃え、金沢職人大学校にある設備を頼らなくても、木工作品を製作できる方もいます。
しかし、卒業する全ての人が工場や設備を揃えることができるわけではありません。
現在、金沢職人大学校にある木工作品の製作に必要な設備は、卒業と同時に使用できなくなります。
これは、3期の9年間の間に、県や市の工芸展、現代美術展などで木工芸の周知に貢献してきた卒業生でも例外ではありません。
せっかく数年かけて身に付けた技術も設備がなければ活かせなくなってしまいます。
全ての卒業生に金沢職人大学校の木工芸に必要な設備利用を開放するのは難しいかもしれません。
しかし、せめて展示会での受賞歴がある人には、もう少し何らかの対応をしていただけたらと思います。
木工では、必要な杢目を得るために、大きな木材を加工する必要があります。
この加工には、電動カンナや昇降盤、帯鋸などの大きな機械を用います。
鋸や鉋を用いれば、当然、人力でもこの加工は可能ですが、時間と手間が掛かり、その時間と手間を作品の値段に加算すると膨大になってしまいます。
また、個人で木工が出来る設備を用意するとなると、機械の購入やその機械を設置する広い場所が必要になるため、実際にはかなり難しいです。
これらの理由から、木工専門塾を卒業した後は多くの塾生が木工を辞めてしまうというのが現状です。
今回の卒業展では、ホビー用の電動工具を使って小さい木工作品が作れないか色々と試作し、小さいながらも指物の皿と箱を展示することができました。
これらの作品を試作する上で、木工専門塾の講師を務める福嶋則夫先生から様々な助言をいただきました。
ホビー用の電動工具を用いて試作してみて分かったことは、指物を組み立てるために必要な溝を木材に入れたりする工程は冶具さえ用意できれば可能であるということです。
しかし、木材を箱や皿の加工に最適な厚みや大きさにするには、それなりの大きさの電動工具が必要になる可能性が高いです。
材料の購入時に加工可能な木材の大きさであるかどうかを考慮したり、まだまだ工夫が必要です。
今回の展示会で第6期は終了しますが、既に第7期生の募集が行われています。
申し込みに必要な資料は、展示会の開催期間中は会場の受付で一部配布しています。
また、金沢市の公式ホームページにある以下のサイトから入手することもできます。
書類の応募締め切りは、10月11日(水)に必着だそうです。
選考は書類と面接で行われ、面接は10月16日(月)の18:00から金沢職人大学校で予定されているそうです。
興味のある方は公式ホームページにて詳細を確認していただけたらと思います。
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