鉋の計測器化の準備

木工
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金沢市希少伝統産業木工専門塾で指物を習うことになり, 鉋を扱う機会が増えてきました. 同じ鉋と木材を使用していて, 当然ながら講師の福嶋則夫先生と自分とで鉋を扱う動作や木材の削れ方に明確な違いがありました. 例えば, 福嶋先生の場合は, 鉋がつっかえることなく, 木が滑らかに削れるのに対し, 自分の場合は, 鉋がつっかえたり, 木が削れなかったりとあらゆることがぎこちないです. そこで, この違いを数値化できないかと思い立ち, 鉋の計測器化の準備 としてセンサーを作ってみました.

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はじめに

 T&N リサーシャでは, 革細工に使用する刻印台と木槌を計測器化して, 革細工で刻印を打つ時の動作を計測しています.

今後, 木工の動作も計測するため, 木工で使用する鉋を計測器化しようと計画中です.

金沢市希少伝統産業木工専門塾には, 木工の基本的な技術を学ぶために2010年から体験も含めて4年間通っています.

色々な作品を作る中で, 鑿(ノミ)や鋸(ノコギリ), 鉋(カンナ)を使うのですが, 鉋は削った木屑の薄さや削る動作から他の道具に比べて違いが分かりやすいと思いました.

そして, センサーを取り付けるのに十分な大きさがあるので, まず鉋から計測器化してみようと思い立ちました.

そこで, 計測器化する際に使用するであろうセンサーの基板と, シルクスクリーン印刷でソルダーレジストを塗布するための版を試作しました.

 

 

シルクスクリーンの版の作成

 以前, 利用者さんからシルクスクリーンの版をどうやって作るのか聞かれたので, その工程を少し紹介します.

まず, テトロン180メッシュが貼り付けられた版となる木枠(図1)にジアゾ感光乳剤EXを塗り, 暗闇で乾燥させます(図2).

ジアゾ感光乳剤EXは紫外線を当てると硬化するという性質があります.

この性質は, 透明なOHPシートなどにインクで図を書くと, インク部分は紫外線が遮られると硬化しないので, インク部分以外を硬化させることに利用できます.

硬化していない部分は水で洗い流すことが出来ます.

なので, ソルダーレジストを塗布する部分はジアゾ感光乳剤EXを硬化させないような図をOHPシートで作成し, 先ほど乾燥させた版の上に乗せ, 2~4分の間で紫外線を照射します.

硬化した部分と硬化していない部分ではジアゾ感光乳剤EXの色の濃淡が違う(図3)ので, 硬化したかどうかすぐに確認できると思います.

硬化を確認した後, 1~2分ほどお湯につけ, 出来るだけ高圧で水を当てて流します.

蛇口から出る水の圧では落ちない場合があるので, こちらではペットボトル専用の加圧式スプレーを使っています.

ジアゾ感光乳剤EXが硬化していない部分を水で洗い落とし, 版を乾燥させたら完成です(図4).

DSC_0253.jpg DSC_0254.jpg DSC_0255.jpg DSC_0256.jpg
図1 図2 図3 図4
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ソルダーレジスト(SR-222)の塗布

 次に, ソルダーレジストの塗布ですが, 電子部品をはんだ付けする際に他の銅板部分にハンダがつかないように(図5), それとその部分が錆びるのを防ぐためにソルダーレジストを塗ります(図6).

ソルダーレジストには, サンハヤトのソルダーレジスト用インクSR-222を使用しています.

ちなみに, サンハヤトからソルダーレジスト補修剤(AYC-L21GR)というものが販売されていますが, 半田ゴテの熱で変質して剥がれてしまいます.

その点, SR-222は紫外線によって硬化すると, 熱に強く, 半田ゴテの熱ぐらいであれば簡単には剥がれません.

ただ, インクの量が少ないと基板上に塗料がのらずにムラができ, 逆に多いとインクがにじんで余計なところにインクが付いてしまいます.

さらに, インクの量が少ない部分は半田ゴテをしばらく当てるとその熱で変質し, 剥がれてしまうのでそれなりの量を塗る必要があります.

また, 塗るときの力加減によって, 版が歪んでインクがにじんでしまいます.

シルクスクリーン印刷は, いろいろとコツがあるようで, 中々上手く塗れずに失敗して塗り直すことが多々あります.

あまりに失敗が多いと投げ出したくなりますが, そういう時は別の方法を模索して成功率を上げれるように試行錯誤するしかありませんね….

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図5 図6

 

 

鉋の計測器化の準備

 今回は, 鉋の計測器化の準備ということで, 鉋に取り付けるセンサーのシルクスクリーンの版の作成と基板を保護するためのソルダーレジストの塗布について簡単に紹介しました.

完成予想図としては, 以下のようになります.

鉋の計測器化の準備

今回使用するセンサーは, SharpのGP2S60で, 反射型フォトインタラプターです.

大きさは3.2mm×1.7mmで, 高さは1.1mmと非常に小さいです.

基板の大きさは14mm×9mmです.

鉋の台に取り付けるため, 出来るだけ小さくしてみました.

問題は, センサーを作ったは良いもののどこに取り付けるかですね・・・.

指物で鉋を扱い始めてからまだ日が浅いので, 今後の鉋の使用方法を見ながらどこにセンサーを埋め込むか考えていく必要がありそうです.

 

 

最後に

最初に書いたように, 当施設では革細工の動作を毎回来るたびに計測し, 数値化しています.

その数値の変化は人によって様々ですが, どの人もその数値の変化に試行錯誤の痕跡が見られます.

当施設に来られる方は最初から革細工をやりたくて来る人はほとんどいません.

最初は無関心でただやっている場合が多いです.

その状態から, 今度は関心を持ち始めると, ちょっとした刻印の打ち間違いにさえひどく落ち込んでしまい, 場合によってはそれでやめてしまいます.

これは精神病によって能力が低下していることに気付けず, 色々な失敗を繰り返しているうちに自分に自信が持てなくなっていることが原因かもしれません.

それでも小さな失敗からの克服経験を段階的にしていくと, いつの間にか失敗しても自分なりに試行錯誤して失敗を克服できるようになります.

そうすると失敗しても「あー」とか「やってしまった…」などと言いつつも, 笑顔で継続するようになります. こういう反応が当施設では大事だと考えます.

さて, まだ一部分のセンサーの作り始めですが, 鉋の計測器化が成功すれば良いのですけど….

 

 

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