こころの元気と体の元気

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運動学習から見えること

当施設では, 現在, 革細工の一部の動作を計測し, その都度, 動作や力加減などがどのように変化するかを調べています.

統合失調症やうつ病, 躁うつ病の利用者さんでその変化を見てみると, ある一定の数値に到達してからはあまり変動しなくなります.

これは運動学習によって動作が習熟するためで, 習熟した動作はあまり意識しなくても自動的に実行できるようになります.

日常の中で歩きながら何かを出来るのは, 歩行も運動学習で, 長年の習熟を経て自動化されているからです.

ところが, この自動化された動作でも, その時の精神状態によっては上手くできないことがあります.

例えば, 緊張して上手く歩けなくなってしまう, なんていう話を聞いたり, 経験したことがある人も少なくないのではないでしょうか?

 

このように運動学習によって, 普段, 何気なく出来ていることが上手くできなかった場合, そこには何かしらの原因があると考えられます.

そこで, 当施設では, もの作りの動作を計測することで, 普段, 何気なく出来ていることが上手くできなかったという現象を数値の変化から捉えます.

今のところ, 再現性がないので断定は出来ませんが, 数値の変化は, 生活環境の変化や対人関係, 薬の変化などに影響されるようです.

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打つ力から見える変化

 先日, 当施設の一人の利用者さんの計測を行ったところ, 革細工で刻印を打つ力が前回に比べて下がっていました.

しかし, 表情が明るく, 計測後のアンケートでも気持 ちの落ち込みや不安にチェックを付けていませんでした.

そこで, いろいろと話を伺ってみると, その日は当施設に来る前からかなり活発に動いていたことが分かりました.

ひょっとしたら, それが原因で身体的にかなり疲れていたのかもしれません.

そのため, 「精神的には元気でも, 身体的にはかなり疲労しているようなので, 今日はしっかり休んだ方が良いですね」と提案したところ, その利用者さんからは「こころの元気と身体の元気は違うんですね」と言われました.

また, 「今までは, こころが元気になってくると活動的になるんだけれど, しばらくするとうつ状態になって, 何もできなくなる. その繰り返しだった」とも言われました.

うつ状態で何もしない・できない期間が長引けば, こころが元気になった時に活動できる期間はその分だけ逆に短くなります.

また, こころが元気になった時, 無理な活動を続けても, 活動できる期間は短くなってしまいます.

この活動できる期間が短くなるのには原因があり, その原因は人によって様々なので, 現時点で原因と対処方法を見極めるには多くの経験が必要であると思います.

 

前回に比べ, 今回は打つ力が有意に低下しています. その後の次回では, 打つ力が前回と同じ値まで戻っています. これまでの計測の中で, 今回以外に数値の変化が見られる時もありましたが, 疲労以外の時もあれば, 原因が全く分からない場合もあります.
図. 刻印を打つ力の変化
 

 

 

こころの元気と体の元気

こころの元気と身体の元気は違う」ということに気付くことは, 活動期間が短くなるのを防ぐために非常に重要なことの一つだと思います.

統合失調症やうつ病, 躁うつ病の患者さんでは, うつ状態から回復してくると活動的になっていきます(こころの元気).

しかし, うつ状態でしばらく何もしていないと, 自分の体が想像以上に弱っている場合があります(身体の元気).

そんな状態で何かをしようとしても, 体力が落ちて何事も継続できず, その結果, 物事が習熟していかないので, 上手くいくはずがありません.

身体が弱っていることに気付けないと, 原因が分からずに気ばかりが焦ってますます自分を追い詰め, 病状を悪化させてしまうこともあります.

今回, 計測を通して, このことに気付いてもらえたことは, もの作りを計測する意味を再確認する出来事でした.

もの作りの計測はまだまだ開発段階であり, 数値をどう解釈するかなど分からないことだらけです.

そのため, 利用者さんからは教えてもらうことが多く, 感謝に堪えません.

 

 

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