地味に影響?

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革細工の計測を始めてから、1年あるいは2年が経過した利用者さんが少しずつ増えてきました。

利用者さんの中には、毎週1~2回で定期的に当施設を利用される方もいれば、病気の影響や仕事の都合などで数週間あるいは数カ月毎に不定期に利用される方もいます。

革細工の計測では、木槌を振る幅・速度・躍度、刻印を動かす時間、木槌で刻印を打った時の衝撃などの各数値の変化を見ています。

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木槌の動きに見られる傾向

利用者の皆さんに共通する変化は、以下の表の通りです。

表.木槌と刻印に関する各数値の変化

  数値の変化
木槌を振る幅 大きい→小さい
木槌を振る速度 速い→遅い
木槌を振る躍度 大きい→小さい
刻印を動かす時間 長い→短い
刻印を打った時の衝撃 大きい→小さい
※ 躍度は動きの滑らかさを表す指標で、躍度が小さくなるということは、動きが滑らかになるということを示します。木槌を振るような、一見、単純な上下運動でも動きが滑らかになっていくようです。

 

 

 

どの数値も、計測当初は大きいのですが、計測回数を重ねるにつれて小さくなっていきます。

意外?なことに、利用者さんによっては諸事情で数週間あるいは数カ月経ってから再計測を行います。

ですが、期間が空いた前後の値を比較しても変わらない場合があります。

統合失調症には記憶・学習の障害があるのですが、当施設に来られる統合失調症の利用者さんも同様です。

計測当初のような大きな数値に戻ることは、何かしらの意図がない限り、今のところはありません。

 

運動学習の変化

革細工の計測から何を見ているのかというと、運動学習の変化を見ているのですが、上記のことから運動学習がかなり強固なものであることが伺えます。

革細工の計測課題で運動学習が進むと、木槌を振る幅・速度・躍度、刻印を動かす時間はほぼ一定になってきます。

ところが、木槌で刻印を打った時の衝撃に関しては、中々、一定になることがありません。

こころの元気と体の元気」に書いたように、どうも疲労がある場合、この値が低下するような傾向が見られます。

今回、別の利用者さんでも疲労が関係しているかも?と思えるような変化が見られました(下図を参照)。

試行回数44・45・46が他の試行回数に比べて低下しています。

この変化について、考えられる原因を伺ったところ、これらの週ではたまたま週末に出かけることが重なり、特に試行回数46では人が多いところへ出かけたとのことでした。

そして、外出頻度の減少に影響されるかのように47回目から数値が上昇していきました。

この変化を利用者さんに見せたところ、「外出が地味に影響している?」とのことでした。

※ 試行回数44・45・46・47は、他の試行回数に比べて有意に低下しています。中でも、46回目は最も低下しています。
図.刻印を打った時の衝撃の変化

 

 

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地味に影響?

実は、当の本人が予想もしていないことが「地味に影響」する場合は多々あります。

そして、このことに気付けないと病気を悪化させてしまう可能性もあります。

当施設の代表である関 京子がみていた入院患者さんの中には、病気の回復とともに作業療法室に来れるようになっていたのに、住み慣れた我が家に外泊で一時的に戻っただけで疲労して作業療法室に来れなくなってしまう、なんてこともあったそうです。

この「地味に影響」することは、すぐに分かるわけでもありません。

場合によっては、しばらく遅れてから影響する場合もあります。

実際、上記の図の利用者さんは、外出から数日経った後に計測したにもかかわらず、数値が下がっています。

 

外出の影響

そして、外出が影響したかもしれないというもう一つの裏付けは日課表です。

当施設では、利用者さんに1週間の生活内容を日課表に記録してもらっています。

日課表は、病気の症状が安定してくると生活内容がパターン化され、書かれる内容も変わらなくなってきます。

上記の図の利用者さんも平日は特に変わっておらず、数値が低下した試行の前の週末だけが普段と異なることをしていました。

このように、当施設ではもの作りの計測と日課表を相互に組み合わせ、どのような事がもの作りや日常生活に影響を与えるかを微力ながら明らかにするお手伝いをしています。

ただ、どのようなことが影響するかが分かるのは、偶然の産物なので、計測や日課表を継続する以外に難しいかもしれません。

また、最初から継続できるわけではなく、時には病気の影響などで中断してしまう場合もあります。

それでも、皆さん、根気強く日課表と計測を継続されているので、頭が下がります。

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